アフリカ友の会

第5回 NGOアフリカ友の会からの現地報告   「結核患者の悲痛な叫び」 

2月23日に中央アフリカ共和国の首都バンギに着きました。
外気温0度のパリで飛行機を乗り換え7時間のフライト後に夕闇が迫るバンギに17時半に着陸。機外に出るとふわっと暖かい空気に包まれました。
外気温34度。コートを脱ぎ、セーターを脱いでも入国事務所のごったがいの中で汗が流れました。現在、乾季の終わりで年間を通じて首都バンギは一番暑い時期です。


翌日から診療所に出ると大きな問題が待ち受けていました。またかとため息が出るのが薬の不足です。人命にかかわる大問題ですが、私たちの力ではどうにもならない問題です。昨年の11月より結核治療薬が不足しています。

昨年の10月までは、「世界基金」から結核の薬を無料でもらえましたが、会計監査の結果、会計が不明瞭との理由で支援が中断されたと説明を受けました。結核の薬は市場で売られているそうです。薬を市場に買いに行くなど前代未聞です。

活動開始して19年目ですが、結核患者さんは無料で治療を受けてきました。結核は飛沫感染する重大な感染症で無料で治療を受けられる疾患です。特に、結核は栄養状態が悪い子どもやHIV感染者には感染しやすい病気です。

結核の薬がなぜ市場にあるのか、こられの薬はどこから来たのか、誰が市場に流したのか誰に聞いても分からないという返事です。一錠30−100Fcfaフランセファ(6−20円)で売られており、毎日60円程度の薬代がかかります。ちなみに日雇労働者の一日の賃金は300円程度で、本来、無料である結核の薬を購入できる患者はわずかで、ほとんどが経済的な理由で治療ができない状態です。お金が足りなくなって途中で治療を中断する患者も多く、薬の耐性ができやすくなると医師は嘆いています。

やっと政府が注文した薬の一部が届いたそうです。来週には排菌している患者を優先に治療が開始できるようです。首都バンギでは、2000名の結核患者が治療を待っていると保健省は述べています。すべての結核患者が治療を受けられるように薬が届くのはいつなのか説明はありません。

会計が不明瞭で「世界基金」の援助が中断されたという話の真偽のほどはわかりませんが、私は先進国のこのような態度に憤りを感じます。会計が不明瞭だからとの理由で結核患者を犠牲にしてよいのでしょうか。

結核患者を野放しにすれば感染はますます拡大します。HIVの感染拡大に伴い日和見感染症である結核患者は増加し続け、昨年(2010年)は、友の会の診療所で780名の新らしい結核患者を登録しました。結核患者さんたちは、医師の指導を守りきちんと治療を続けていました。

人道的にこのような制裁が許されるはずはありません。これは殺人的行為です。結核の治療ができないために亡くなっている人々がどれだけいるかの把握はできていませんが、確実に死亡者は増えているはずです。

確かに搾取、横領などの不正はあると思います。しかし、一部の管理職の人が行った不正などで、貧しい人々、それも患者さんが犠牲になるような制裁を行う先進国の態度には納得がゆきません。

臨床の現場では、毎日、先進国と途上国の命の重さの格差について考えさせられます。今、この国では2千円がないために、結核の薬を買えなくて亡くなってゆく命があります。日本で2000円は、ちょっと贅沢な夕食一食分です。私たちは保健省に対して陳情に行くだけしかできません。なかなか解決されない問題にいらいらと憤りを募らせている毎日です。

2011年3月6日 徳永瑞子