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昨年、世界の人口は70億人に達した。そのうちでアフリカ大陸54か国の人口は10億人。2050年には、世界の人口は90億人になり、アフリカ大陸は倍の20億人になると推定されている。地球上の人口が増えると食糧問題や環境汚染などの問題が取りざたされる。あるフランス人の学者が、地球は90億人の人口の食糧を供給できる、それはアフリカ大陸の耕作可能地の9割がまだ耕作されていないという内容だったように記憶している。「アフリカ友の会」は、20年前からエイズ患者さんへの支援活動を行っている。この20年間終始一貫して心を砕いてきたのは「食べさせる」ということであった。食べられない人々がいる、栄養失調児が減らない、彼らが食べられるようにするにはどうすればよいのかということであった。
エイズ患者自立支援として1999年から「マイクロクレジット」を始めたが、このシステムを理解できず、無担保で借りたお金をそのまま生活費に流用してしまうなどで、返済率が6−7割程度に留まっていた。対象が、子どもを抱え貧しい生活を強いられているHIV感染者であるため返済の催促をすることははばかられる。しかし、「マイクロクレジット」で商売を成功させ生計を立てている患者さんたちが50名ほどいることは嬉しい。
昨年(2011年)の8月から農業を始めた。「土地を借りて耕作している」「農業をしたくても土地がない」など患者さんたちからの声を耳にする機会があったので、土地を借りれば彼らの食糧の足しになるのではないかと考えたのがきっかけだった。これこそが持続可能な支援につながると大きな希望を持った。
首都バンギ市内に、2か所で約3.5ヘクタールの農地を借り、27名が耕作を始めた。主食のキャッサバを植えている。キャッサバは、イモ科の植物で、茎を10センチほど地下に刺し、1年から1年半後にはサツマイモの大きさの根塊になる。キャッサバの植え付けと同時にキャッサバの間に野菜類を植えた。雨季中(4月から10月末まで)は野菜類は3−4週間で収穫できる。トウモロコシやサツマイモは2−3か月で収穫できる。今回、野菜類の収穫量を知ってその量の凄さに仰天したといっても過言ではない。落花生36杯(この国では20リットル入りのタライが量を測る基準である)、トウモロコシ36杯、キュウリ19杯、カボチャ35杯、サツマイモ11杯、オクラ12杯、マニョックの葉っぱ(副食になる)212杯、その他種々の現地の野菜が採れている。
彼らは、収穫物を家族で食べ一部販売をして現金も得ている。しかし、このことを手放しで喜ぶことはできなかった。野菜類は、約7か月の間に2−3回の収穫ができるにも関わらず、彼らは種を買うお金がなかった。最初は、耕作地の借地代、農具、種々の種子まですべてをお膳立てした。農業を始める準備段階に再三彼らと話し合いを行い、グループの代表、副代表、会計係の役員を決めた。会計係は、メンバーから少しずつお金を集め、種子の購入、2年後に更新になる借地代まで賄うというのが取決めであった。耕作地がありながら、種子を買うお金がないために種まきができず、大きな収穫を逃したのである。野菜類を収穫した後のマニョック畑は、草が生い茂った状態で、彼らと話し合いを持った。共同農場は、収穫だけに来て草取りに来ないメンバーがいると不満が続出した。彼らの提案で耕作地を分割することで現在草取りが進んでいる。
毎日の食糧にも事欠くような貧困の中にいる人々なので、自立支援としてマイクロクレジットや農業のチャンスをお膳立てしたが、自発性に欠けるのはなぜだろうか。もともと私たちが考えるほど彼らは貧困ではない、それは親族が助けてくれているからである。または、貧困のあまり、無気力になってしまったのか。そもそも、マイクロクレジットも農業も私たちが旗振りをして始めたプロジェクトであり、彼らが自発的に始めたものではないために考え方の相違があり持続性がないのだろうか。私たちが勝手に空回りすることなく、双方の歯車がかみ合った援助とは何か彼らと共に真摯に話し合う必要がある。
2012年8月26日 バンギにて 「アフリカ友の会」 徳永瑞子
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